企業の戦略策定を担う点で、経営コンサルタントと事業会社の企画職は類似の能力を求められるが、その立場と最終的な責任の所在は根本的に異なる。この差異を深く理解することは、自身のキャリアを考える上で不可欠だ。
コンサルタントの職責は、第三者の視点からクライアントの経営課題を分析し、解決策を提案することにある。そのプロセスでは、市場データや競合分析といった客観的な根拠が重視される。プロジェクト契約に基づき、期間内に高品質な戦略提言を納品するが、実行そのものには直接的な責任を負わない。高度な論理的思考力と分析能力に加え、優れた仮説構築力がその資質の中核を成す。
対して事業企画職は、自社の当事者として事業計画を立案し、その実行までを推進する。新規事業の立ち上げから既存事業の改善まで、その対象は幅広い。社内調整から最終的な事業成果まで長期的な責任を負うのが特徴だ。自社への深い理解と、多様な関係者を巻き込む調整力、そして計画を完遂させる当事者意識が求められ、時には粘り強い交渉も厭わない。
コンサルタントが外部の客観性に基づき解決策を「提案」するのに対し、事業企画職は内部の当事者としてその戦略を「実行」する。この役割の違いは、両者がアクセスできる情報の性質に起因すると言える。コンサルタントは多様な業界のベストプラクティスという広範な外部情報を持つが、個別企業の暗黙知や組織力学には疎い。逆に事業企画職は内部情報に精通するがゆえに、自社の常識というバイアスに囚われやすい。結局のところ、両者は共に不完全な情報下で意思決定を求められる。その本質的な差異とは、どのような情報の非対称性を引き受け、いかなる認知バイアスと対峙するかという点にこそ見出せるのである。