営業とマーケター、その戦術と思考プロセスの違い

事業の収益拡大を担う職種として、営業とマーケターはしばしば同一線上で語られる。しかし、両者が担う職責と求められる能力は本質的に異なり、この差異を認識することが、組織の成長および個人のキャリア形成において重要だ。

営業の主な職責は、顧客との直接的な対話を通じて信頼関係を構築し、最終的な契約締結へと導くことにある。個別の顧客が抱える課題をヒアリングし、最適なソリューションを提示する対人折衝能力や、短期的な目標達成に向けた粘り強い実行力が必要だ。また、最前線で得た顧客の声を開発や企画部門にフィードバックする役割も担う。最終的には、個別の商談成立を積み重ね、具体的な売上数字を達成することが営業の目的である。

対してマーケターは、市場調査やデータ分析に基づき、持続的に需要を創出する仕組みの構築を主な職責とする。市場全体の動向を捉え、製品戦略やプロモーション活動を立案・実行し、潜在顧客の購買意欲を中長期的に醸成せねばならない。論理的な分析能力と、市場の変化に対応する柔軟な仮説検証プロセスが重要である。その活動は広告戦略からブランド管理まで多岐にわたる。市場における競争優位性の確立を目指す仕事だ。

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市場全体の需要を喚起し機会を創出するマーケティングと、個別の機会を確実に成果へと結びつける営業は、事業成長を支える一連のプロセスである。マーケターが描いた戦略図を営業が実践し、その最前線の情報が再びマーケティング戦略を精緻化する。この有機的な連動性を理解した上で、個々の成果を積み上げる実行段階に貢献したいのか、あるいはその土壌となる戦略基盤の構築を担いたいのか、自身の志向性を問い直すことが肝要であろう。