企業の顔である広報と、根幹を成す人事

企業の持続的成長において、広報と人事は共に無形の資産を扱う重要な機能である。しかし、一方は企業の社会的評価を、もう一方は組織能力を対象としており、その職責とアプローチは根本から異なる。両者の機能を正確に理解することは、キャリアパスを考える上で極めて有益だ。

広報の主な職責は、企業の活動や理念を社会やメディアといった社外のステークホルダーに発信し、良好なパブリックリレーションズを構築することにある。報道発表やイベント企画、危機管理対応などを通じて、社会における企業の肯定的な評判(レピュテーション)の維持・向上を図らねばならない。社会の動向を的確に捉える情報感度と、企業のメッセージを正確に伝えるコミュニケーション能力が求められる。

対して人事は、経営資源の根幹である「ヒト」に関わる全ての領域を主な職責とする。採用、育成、評価、労務管理、制度設計といった多岐にわたる業務を通じて、従業員のパフォーマンスとエンゲージゲージメントの最大化を図る。個々の従業員と組織全体の双方に対する深い洞察力と、長期的な視点での戦略立案能力が必要だ。最終的に、事業戦略を遂行し得る強固な組織を構築することを目指す。

企業の社会的評価を構築する広報と、組織文化を醸成する人事は、企業の総合的なブランド価値を高める上で相互に作用する。人事が築いた魅力的な組織文化は広報活動の強力なコンテンツとなり、広報が獲得した社会からの信頼は従業員のエンゲージメントを高めるのだ。この価値の好循環を理解した上で、社会という広い舞台で企業の物語を構築する役割を担いたいのか、あるいは組織の土台を固め働く人々の活力を生み出す役割に貢献したいのか、自身の志向性を深く考察すべきだろう。